MちゃんとS上司の恋模様
「麦倉さん、いいなぁ。須賀主任の補佐的な仕事をすることになるだなんて」
「私はいつもどおりの仕事の方がいいです。もし、よろしければ代わりますよ?」
須賀主任の補佐的な仕事から解放されるのなら、喜んで代わりたい。
心の奥底からそう思った私に、宮間さんは目を丸くする。
「えー? どうして? あんなにステキな男性とお仕事できるなんて嬉しくないの?」
「全く、ですね」
きっぱりすっぱり言い切る私を、宮間さんは珍獣でも見るような目つきで凝視してきた。
「貴女の目は節穴なの?」
「節穴……ですかねぇ?」
私は胸を張って言おう。こう見えて曲者をかぎ分ける嗅覚だけは優れていると思う。
その私が言うのだ。須賀主任とは絶対に関わらないほうがいい、と。
そんな私の目を節穴だというのか、宮間さんは。
確かに男としては魅力的かもしれない。だが、仕事においての話は別である。
絶対に厄介なことを押しつけられそうだと、野生の勘が叫んでいるのだ。
半ば呆れながら肩を竦めると、宮間さんは目を輝かせて私の方へと身を乗り出してきた。
「ねぇ、じゃあ私が代わってもいい?」
「いいですよ」
宮間さんは、二つ返事で頷く私に握手を求めてきた。
彼女は私と固く握手を交わしたあと、すぐさま須賀主任に突進して行った。
あの行動力は本当にスゴイと思う。