MちゃんとS上司の恋模様
本社から内示があったときには、営業部全員が顔面蒼白になったのは記憶に新しい。
なんでも送られてくる刺客は本社でかなりの営業成績を上げている社員だそうで、栄転という形でこのN支社にやってくるというのだ。
本社で付けられていたあだ名は“鬼軍曹”。あだ名を聞いただけで背筋が凍る。
そこでN支社、営業部の面々は考えた。
“なんとしてでも今よりは営業成績を上げておかなければ命がない”と……
というわけで、ここ最近の営業部は活気づいている。いや、活気じゃない……恐怖に戦いて必死になって働いているのだ。
今日その鬼軍曹がやってくる日で、今は支社長室にいるという話。嵐到来はすぐそこだ。
キーボードをリズミカルに叩いていると、オフィス内が一気にざわついた。
たぶん鬼軍曹がお出ましになったのだろう。
「えー、みんな。その場でいいから耳を傾けていて」
ちょうど切りの良いところまで仕事を終えた私は、手を止めて声がする方向を見た。
部長の隣には一人の男性が立っている。
その男性はとても野性的で魅惑的なフェロモンを漂わせていた。
背がそこそこ高い部長より、さらに高い。身体もがっしりとしていて男性味溢れている。
顔はパーツ一つ一つが魅力的で、思わずドクンと胸が高鳴ってしまうほどだ。
髪の毛は漆黒で短く切りそろえてあり、整髪剤でキレイに整えられている。
少しだけ色黒な肌、そして筋肉質っぽいその身体を見る限り、何かスポーツをやっているのだろうか。