MちゃんとS上司の恋模様
辺りを見回すと、女性社員は熱烈な視線で彼を見つめている。
わかる、わかる。思わず魅入ってしまうほどのイケメンだ。それも大人の雰囲気漂わせていて、危うく蹌踉めいてしまいそうになる。
だがしかし、本社からの刺客だ。カッコいい上司が来たと騒いでいる場合じゃないかもしれない。
気を引き締めながら、私はもう一度その男性を見つめた。
「今日から営業部一課の主任となる、須賀誠一(すがせいいち)くんだ。須賀くん、自己紹介を」
部長からの紹介はとても手短だ。部長にしてみたら、須賀さんは目の上のたんこぶになりかねない存在なのだから、それも仕方がないだろう。
部長にとっても、彼の栄転は面白くないはずである。
部長のあからさまな態度にも顔色を変えず、須賀さんは営業部内を隅から隅まで見つめたあと、口角をクイッと上げた。
その瞬間、私の背筋はゾゾッと震える。
嫌な予感に震える私は、慌てて辺りを見回した。
きっと他のみんなもこのおぞましい空気を感じとったはずだ。
しかし、私は何度も目を擦った。
女性社員たちは、より頬を真っ赤に染めて須賀さんを見つめている。
その眼差しはポッーと熱にうかされているようで、私は二度見をしてしまった。
大丈夫か、皆さん。正気ですか、皆さん。
大声で叫びそうになって、慌てて口を手で押さえた。