MちゃんとS上司の恋模様
『麦倉さんの顔が見たいからね』
「へ!?」
思わず叫んでしまった。
営業一課の皆の視線が一斉に私に集ったのがわかる。
突然叫び声を上げてしまった私は、申し訳なくて営業部の面々に慌ててペコペコと頭を下げた。
そんな挙動不審な私の耳に、電話口から軽やかな笑い声が聞こえる。
格好良すぎる藍沢さんに、ドキドキしてしまって心臓に悪い。
(ああ、もう。恥ずかしい! 穴を掘って隠れてしまいたいよぉぉ!)
カッーと頬が一気に熱くなる。手で覆ってみたが、熱が冷めることはない。
それどころかますます赤くになっていくように感じる。
慌てふためく私の耳に心地よい声色が響いた。
『麦倉さんは本当に可愛いよね』
「えっと、あの、その……ありがとうございます!」
何を口走ったのか。自分でもよくわからない。
とにかく恥ずかしくて嬉しくてどうにかなってしまいそうだ。
心臓なんて先ほどからバクバクと異様なほど高鳴っている。
誰かの耳に聞かれはしないか、と気が気じゃない。
クスクスと笑う藍沢さんの声を聞くだけで、彼がステキな笑顔を浮かべていることは想像できる。