MちゃんとS上司の恋模様
ああ、もう。なんで電話越しなんだろう。
目の前に藍沢さんがいれば、キラキラ輝く王子様スマイルを拝むことができたというのに。
『じゃあ、麦倉さん。資料の方、よろしくね』
「はい、畏まりました!」
こうなったら少しでも早く藍沢さんに資料を届けるために、うちのS主任の尻を叩いて急がせよう。
そんなことをこっそりと考えていると、藍沢さんは真剣な声で私の名前を言った。
『麦倉さん。俺、須賀とは同期だから苛められたら言うんだよ。注意してあげるからね』
「!」
『我慢なんてしなくていい。全部俺に任せてくれればいいから。心配しなくて大丈夫だよ』
「は、はい!」
なんて優しい人なんだろう。
藍沢さんは天使だ。王子様だ。間違いない。
こういう気遣いができる人だからこそ、社内でも一、二位を争うほど人気が高いのだろう。
私みたいにあまり接点がない社員に対しても、この気配りよう。
こういう優しさを、うちの主任にも見習ってもらいたいものだ。
須賀主任が聞いていたら睨まれるだろうことを考えながら「ありがとうございます!」と元気よく返事をすると、藍沢さんは深刻そうな声で言う。