MちゃんとS上司の恋模様
慌てて椅子を回転させて振り向くと、そこには営業一課所属、総合職としてバリバリ営業をしている久美さんが心配そうな顔をして立っていた。
今日も今日とて、格好良くて美しい。思わず見惚れてしまう。
だが、どうも久美さんの様子がおかしい。
どうしたのかと違和感を覚えたが、私はとりあえず久美さんにほほ笑みかける。
「久美さん、お疲れさまです。商談はどうでした?」
「バッチリよ。あとは調印を済ませるだけ」
「さすがは久美さんです!」
N支社の営業成績はここ最近はあまりよくなかったのだが、久美さんだけは堅実な数字をたたき出していた。さすがは、やり手のキャリアウーマンである。
多田久美(ただくみ)さん、三十歳。
つい先日結婚をしたばかりで、私の憧れの人だ。
スラリと背が高くモデルばりのスタイル。ロングの髪はいつもキレイに結われていて「美容師さんですか?」と何度も聞いてしまうほどだ。
そういえば、と思い出す。
久美さんも須賀主任と同期だと聞いたことがある。ということは、藍沢さんとも同期ということか。
ここの同期は本当にレベルが高いと思う。
クールビューティーな久美さん、強面でドSだが顔はいい須賀主任、そして天使の笑みを絶やさず優しい王子様の藍沢さん。
この三人が並んだところを是非とも見てみたいものだ。きっと後光が差しているに違いない。
きっとすごい光景だろうなぁ、と一人で想像してワクワクしていると、久美さんは眉間に深く皺を刻んだ。