MちゃんとS上司の恋模様



「今の電話、もしかして藍沢?」
「あ、はい。そうですよ」

 相変わらずの天使ぶりを久美さんに話す。どれだけ藍沢さんがステキだったか。あれこれ久美さんに話し倒した。
先ほどの余韻にどっぷり浸っている私に、久美さんは顔をますます歪める。

「ねぇ、真琴ちゃん。アイツには気をつけなさい」
「アイツって……藍沢さんですか?」
「そうよ。外面だけはいいから騙される子たくさんいるみたいだし。とにかくいい噂は聞かないヤツだから」

 眉間の皺をより深くする久美さんに、私はカラカラと笑った。

「何を言っているんですか、久美さん。天使のように優しい藍沢さんに、何を警戒すればいいんですか?」
「あのね、真琴ちゃん」
「あ、警戒すると言えば!」
「やっとわかってくれたのね!?」

 ホッと胸を撫で下ろす久美さんに、私は真剣な顔をして言った。

「藍沢さんにうっかり惚れないように、ってぐらいでしょうか? いやでも、あの笑顔と優しさには要注意ですよねぇ」
「……」

 何故か無言のままの久美さんを見つつ、私は夢見心地で口を開く。

「うっかりしていると、すぐに恋しちゃいそうですもの。でも、わかっています。藍沢さんクラスの人にはステキ女子がお似合いですから。私なんてお呼びじゃないってことは!」

 一気にまくし立てた私だったが、久美さんが呆れ顔をしているのに気が付く。
 久美さん? と声をかけると、肩を竦め大きくため息をつかれてしまった。

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