MちゃんとS上司の恋模様
「とにかくうっかりしていて絆されないようにね」
「了解です!」
ピシッと敬礼する私を見て、久美さんは再び大きなため息をつく。
私は目を見張るほどの美女でもないければ、思わずファンになってしまうアイドルのように可愛くもない。
藍沢さんが見向きもしてくれないことは重々承知しているし、世間から見ても「麦倉さんじゃあ無理でしょう」と考えるだろう。
逆立ちしたって藍沢さんの目に止まるわけもないし、恋人なんていう関係になることもない。
そんなに心配しなくてもいいのに、とは思うが、私のことを心配してくれる久美さんの優しさが身に染みる。
嬉しくてニッコリとほほ笑むと、久美さんは頭を優しく撫でてくれた。
本当にキレイで格好良くて優しいお姉さんだ。ますます憧れてしまう。
「さぁて、仕事頑張りましょうね」
「はい!」
元気よく返事をすると、久美さんは机に広げられているファイルを見て目をつり上げた。
今度は一体、どうしたというのだろう。
あまりの視線の鋭さに、私はビクリと肩を震わせた。
「藍沢も要注意人物だけど、須賀も同等よね」
「へ?」
どういう意味だろうか。