MちゃんとS上司の恋模様



 首を傾げていると、久美さんは顔を上げて須賀主任のデスクを睨みつけた。
 ちょうど本人は退席中で、もぬけの殻となっている。
 時間を見る限り、主任は営業会議に出ているのだろう。

 主任の不在を確認した久美さんは、吐き捨てるように言った。

「アイツも何を考えているのか。確かに真琴ちゃんに仕事の補佐をしてもらえれば、須賀は営業に専念できるわけだけど」
「は、はぁ……」

 久美さんの言葉にはかなりの棘がある。
 これはかなり怒っている証拠だ。

 そんな久美さんは、ますますヒートアップしていく。

「でも、なによ。この仕事量は! これいつまでにやれって言っているのよ、あのバカは」

 腕を組んでイライラとしながら指をトントンと動かしている久美さんに、恐る恐る言った。

「えっと、こちらのファイルはとくに期限は設けられていないんですけど。とにかく早くって言われています。あ、さっき追加された資料は今日までって……」

 久美さんの威圧的な雰囲気に呑まれた私は、正直に話す。だが、ビクビクしているため段々声が小さくなる。

「はぁ!? アイツは何様のつもりよ。真琴ちゃん、須賀のヤツをあとで注意しておくから」
「だ、大丈夫ですってば、久美さん。これも仕事ですし」
「真琴ちゃん……」

 心配してくれる久美さんに、自分の顔の前で何度も手を振り「大丈夫だから」と繰り返した。

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