MちゃんとS上司の恋模様



「そういう冗談は余所でしてください。喜びまくる女子社員がたくさんいるはずですから」

 プリプリ怒っている私に対し、須賀主任は涼しい顔をして言う。

「そういう女には興味はない。毛を逆立てて俺に刃向かう子猫の方がいい」
「はぁ?」

 椅子に座っている須賀主任を顔を歪めて見下ろすと、視線が合う。
 すると須賀主任はニッと口角を上げ、魅惑的な笑みを浮かべた。その瞬間、思わずドキッと胸の鼓動が高鳴ってしまう。

 すぐさま視線を逸らし、私はやけくそになりつつ須賀主任に言葉を投げつけた。

「どこかの鬼軍曹は、本社でもかなりの人気者で女性社員を次から次にとっかえひっかえしていたっていう噂を聞いていますよ?」
「フン、くだらない。どこでそんな誤情報を手に入れた?」
「誤情報? しらばっくれても無駄ですよ。須賀主任の同期である藍沢さんから伺っております」

 動かぬ証拠を突きつけられた須賀主任は何も言い返せないだろう。
 どうだ、参ったか。フフンと鼻を鳴らしてふんぞり返る私に、須賀主任は大きく息を吐き出した。

「バカが」
「誰がバカなんですか!?」

 再び大きな声で叫んでしまった。慌てて口を手で塞ぐ私に、須賀主任は肩を竦める。

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