MちゃんとS上司の恋模様
だが一つ問題がある。私が忠告したとしても信じてくれる女子社員がいるだろうか。
残念ながらいないかもしれない。そう断言ができるほど、この目の前の男はうまく立ち回っているのだ。
それがわかっているからこそ、悔しさが込み上がってくる。
ああ、どうしたらこの自信満々の男の鼻をへし折ってやることができるのだろうか。
仕事で見返したいところだが、今のところ言われたことのみしかできていない。
早く仕事を覚えてギャフンと言わせたい。そう心の中で誓っていると、入り口の辺りから声がする。
振り向くと、そこには冷たい笑みを浮かべた久美さんが立っていた。
「久美さん、お疲れ様です」
「お疲れ、真琴ちゃん」
私が声をかけると、不機嫌な様子が一転、とても優しくほほ笑んでくれた。
久美さんはいつもどおりの笑みを浮かべたあと、ヒールの音をカツカツと立てて須賀主任の前に立ちふさがった。その表情はとても恐ろしい。
震え上がっている私を余所に、久美さんは須賀主任の顔を指差した。
「ちょっと、須賀。アンタ、いい加減にしなさいよ?」
「なんのことだ?」
「なんのことだ、じゃないわ。真琴ちゃんにだけ仕事をかなりさせているでしょう? 彼女がやっていた仕事を他の四人に回したことは評価してもいいけど、それによって真琴ちゃんの仕事が一気に増えた気がする!」
「……」
久美さんは腰に手を置き、威圧的な態度で須賀主任を睨みつけた。