MちゃんとS上司の恋模様



「ちょっと、真琴ちゃん。貴女もキチンとこの鬼上司に言わなきゃだめよ」
「い、い、一応言いましたけど……」

 今までの仕事をごっそりと取られ、このファイリングの仕事を言い渡されたときに、キチンと「無理です」と須賀主任には言ってある。
 だけど、それを聞いてくれる鬼軍曹ではないことは……長年の付き合いだという久美さんならわかってくれるだろう。

 久美さんは大きく息を吐き出し、再び須賀主任を睨みつけた。

「とにかく、真琴ちゃんは連れて行きますから。今後のことは、部長に決めてもらいます!」

 久美さんは仁王立ちをし、どこかに電話中の須賀主任に言い放つ。
 それでも電話を優先している須賀主任に、久美さんは顔を歪め、ため息を盛大につく。

 さぁ、行きましょう。そう言って私を促す久美さんに、電話を切った須賀主任はフンと鼻で笑った。

「今日の仕事は終わり。さて、帰るぞ」
「はぁ!? 何よ。そのとってつけたようなこと言って。さっきまでは鬼軍曹していたのに、アンタも長いものには巻かれるのね〜」

 フンと鼻で笑って胸を反らす久美さんに、須賀主任は大きく伸びをして言った。

「曲者は退散したからな」
「はぁ? 何言ってるのよ、須賀。曲者はアンタでしょ? ア ン タ!!」

 久美さんは怒りを須賀主任にぶちまけているが、私としては仕事の進歩状況の方が気になる。
 追加で須賀主任が持ってきたファイルは、今日中にということじゃなかっただろうか。
 ということは、このファイル整理をしなければ明日誰かが困るということだ。

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