MちゃんとS上司の恋模様



「主任はお帰りください。私は仕事を全うしますから」
「だから、もういい。帰るぞ」
「ちょっと、須賀主任! 私のことなど気にせず帰ってくれればいいんですってば!」

 こちらとしても意地だ。ムンと唇を横に引いた。
 そんな私を見て、須賀主任は肩を竦める。

「……とにかく帰るぞ」
「ちょ、ちょっと!」

 須賀主任は山となっていたファイルを両手で抱え、ササッと戸棚に閉まってしまった。

 あっけに取られていると、須賀主任はフッと優しい笑みを浮かべた。
 再びドキッと胸が高鳴ってしまう。

 戸惑う気持ちを隠しながら主任を見つめると、彼はジャケットを羽織りながら言った。

「麦倉。駅まで送ってやる」
「べ、別に! 一人で帰ることできますから」

プイッと顔を背けて視線を逸らすと、久美さんがそれに応戦してきた。

「そうよ、そうよ。須賀はさっさと一人で帰れば〜? 真琴ちゃんは私がしっかり駅まで送り届けるから心配ご無用よ!」

 シッシッと手で追い払う仕草をする久美さんに、須賀主任は無表情で口を挟む。

< 49 / 182 >

この作品をシェア

pagetop