MちゃんとS上司の恋模様


「おい、この資料見てみろ」
「え?」
「去年のデータと一昨年のデータを見比べて。自ずと答えは出てくるだろう?」
「えっと、え?」

 怯えまくっている男性社員は、主任から声をかけられただけでビビっている様子だ。
 そんな男性社員に、須賀主任はフッと力を抜いて笑う。

「まずは力を抜けよ。俺の話を聞いてるか?」
「は、はいぃぃぃ!」
「取って食いはしねぇから、ちょっと落ち着けって」

 苦笑する須賀主任を前に、男性社員はまだテンパっている。

 だが、それも仕方がないことだろう。
 なんせ相手は『鬼軍曹』と本社で恐れられていたという人物だ。

 哀れに思いつつも、私が口出しすることはできない。もちろん、私以外の営業部の面々だって同じことが言えるだろう。
 仕事をしつつも意識は彼ら二人に向け、誰もが固唾を呑んだ。

 テンパってしまっている男性社員は未だ挙動不審である。
 それを見た須賀主任はポンポンと男性社員の背中を叩いた。

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