MちゃんとS上司の恋模様
「須賀だ。今日からお前たちと馬車馬のように働き、こき使うから覚悟しとけよ?」
声にならない黄色い声が女子社員たちから上がったが、営業部の男性たちは皆青ざめている。
男性陣たちは須賀さんの威圧的な態度、言葉に震え上がってしまっている。もちろんそれは私も一緒だ。
他の女性社員たちと同じように「フェロモンダダ漏れの王子様がやってきたわぁ〜」なんて色めき立つことはない。
だって、直感が私に教えてくれる。彼はたぶん……厄介な上司になる。
あれはS、それも超ド級のS上司な予感がする。
私の周りには所謂S属性の人が多い。だからこそS属性の気配を察知する能力だけは高いのだ。
絶対にこの人、S属性の人に違いない。同時に、仕事をするにおいてマイナス要因になることは確かだろう。
私は男性社員の皆さんと目配せをする。そしてお互い大きく頷いた。
今までのようにまったりムードで仕事をすることはできそうにない。
皆で協力をし、フォローをし合わないととんでもないことになりそうだ。
我関せずといった様子の部長、王子様がやってきたと浮かれまくる女子社員。
そして——— 今後のことに不安を抱き、青ざめる男性社員+ひとり。
なんだか波乱の幕開けを感じ、私は小さく小さくため息をついた。
そう、ドS上司に見つからないように、こっそりと。