MちゃんとS上司の恋模様




 私は仕事の手を止め、部長と資料を見て意見交換をしている須賀主任を盗み見る。
 あれだけドSで俺様なのに、まだ本性を現していないというのか。

 もし、本性全開になったとしたら……私の身と心は持つだろうか。いや、だぶん持たない。
 ゾクゾクと背筋が寒くなり、自分で自分の腕をさする。
 想像しただけでも恐ろしい。

 そんな恐ろしい事態を回避するためにも、早く仕事を覚えて自分のモノにし、須賀主任に有無を言わせないほどの能力を身につけたい。
 早急に身につけなければ、身の破滅を迎えることになる。それだけは絶対に避けたい。

 ヨシッと心の中で決意をしていると、背後からポンと肩を優しく叩かれた。

 慌てて振り向くと、そこには私の目の保養、そして心のオアシスである営業二課の藍沢さんが立っていた。
 それも私に向かってほほ笑んでいるではないか。王子様スマイルがキラキラと眩しくて目を細めてしまう。

 後光が見えます、と呟いて、思わず手を合わせて拝んでしまいたくなるほどだ。

「麦倉さん、この前はありがとう。早めに持ってきてもらえて助かったよ」
「いえ、とんでもないです。こちらで長い間ファイルを預かってしまってスミマセン」

 藍沢さんが言っているのは、以前電話で頼まれたファイルの件だ。

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