MちゃんとS上司の恋模様
きょとんと目を丸くさせた男性社員に、須賀主任は苦笑いを浮かべる。
そして、彼を手招きして自分のPCのディスプレイを見るように促した。
須賀主任はカタカタとキーボードをタイピングしたあと、エンターキーを叩く。きっと幼稚園のHPを見ているのだろう。
すると、ディスプレイを覗き込んでいた男性社員は「……あ!」と小さく呟いてディスプレイを指差した。
「本当だ。この教室の写真を見る限りでも新しいモノ好きだってことがわかりますね。園児が座る椅子もデザイン賞を前年度受賞したものだし、空気清浄機も最新モデル。園児が使っているクレヨンなんかも最近出たばかりのものですね」
「新しい幼稚園だ。設備なんかはもちろん新しいデザインなんかを使うのは当たり前だろう。ただ、ここの園長は新しいモノが好きだってことはHPに掲載している園長の言葉にも表れている」
「えっと……常に最先端のものを取り入れて教育現場をより良いモノにしていきます、か……」
「この園に営業には行ったんだろう?」
須賀主任は腕組みをし、チラリとその男性社員を見る。
はい、と頷く男性社員に須賀主任は小さく息を吐き出した。
「うちは幼児教材については老舗中の老舗だ。そこがネックだったということだ」
「新しいモノ好きの園長に敬遠された、ということでしょうか」
「そういうことだな。それもここの園長、N市幼稚園協会の理事をしている。その発言力で他の幼稚園も右に倣えをした可能性が大だ」
「は、はぁ……でも、新しいモノ好きの園長がうちみたいな老舗を好んでくれますかね? それが原因で新しい業者を入れたんですよね」
遠くで聞いている私も思わず頷いてしまう。