不器用な彼女

すれ違い

昨夜から何度も電話もラインもしているのに、社長には繋がらない。

昨日の今日で顔を合わせづらいのは同じなのに、出勤してるのは詩織のみで、社長も茉由も出勤しておらず、朝から鳴り響く事務所の電話に頭を抱えている。二人とも無断欠勤だ。

社長の携帯は電源すら入っていない。現場からの工事の確認や急ぎの打ち合わせの事を詩織に言われてもサッパリ分からない。

『社長居る?連絡つかないんだけど!』
『クロス糊、足りないんだけど!』
『カウンターの天板違うのが届いてる!』

そんな問い合わせに「連絡がつき次第折り返します」とただ謝るしか出来ない。

仕事に来ないなんて初めての事だ。
家で倒れていたりして? そんな不安が頭をよぎりカバンを掴むと社長の家に向かう事にする。

事務所に鍵をすると茉由宛にメモを残した。

大通りに出て直ぐにタクシーを捕まえる。

(タクシー代は社長に請求してやる!)
(寝ていたら叩き起こしてやる!)



朝の道は混雑していて20分かかってで社長の自宅に到着した。


ピンポン♪ピンポン♪ピンポン♪ピンポン♪


合鍵は持っておらず、ひたすら呼鈴を押す。




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