不器用な彼女
呼鈴を押し続けても反応がない。

もう諦めて帰ろうと、玄関から門扉に向かうと、
ガチャ!ガチャ!と玄関の鍵を開ける音がする。

(社長!居るじゃない!)

門扉から玄関に戻り、玄関の前に仁王立ちしてドアが開くのを待つ。

「仕事は仕事だ!」「責任を持て!」といつも厳しく言う社長に今日ばかりはそのセリフをそのままお返ししてやろう!

ドアが開く。


中から出てきたのは…



ほぼ下着姿の女の人だった。
今起きたばかりなのは一目瞭然だ。
胸元が大きく開いたキャミソールにショートパンツ。そして首筋にはキスマークまでついている。


「どちら様?」

社長は一人暮らしじゃなかったっけ? 家を間違えたのかと辺りを見回す。

間違いなくここは社長の家だ。何度もお邪魔してる。間違うはずがない。

「…こ、こちら、…椎名さんのお宅で間違いないでしょうか?」

「そうですけど」

「…きょ、恭介さん…ご在宅でしょうか?」

ほぼ下着姿の女の人は、妖艶に「クスッ」と笑う。

「主人はまだベットの中よ」






頭が真っ白になる。
それと同時に目眩と強い吐き気がこみあげる。


「何の用事かしら?」

「…いえ、何でもありません!」


社長、結婚してたの?!
衝撃の事実に本題も伝えず、ろくに挨拶もせず、門扉から飛び出した。
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