不器用な彼女
土曜日。

「産婦人科には行ったのかい?」

目の前のお爺ちゃんは詩織を覚えていてくれたようだ。

「その節は…親切にして頂いて、ありがとうございました」

詩織はデパートで買った和菓子を手土産に太田医院を訪れている。

治療費を受け取るようにお願いしても、お爺ちゃんは「もう畳んだ病院だから」と「余っていた物を使ったから」と頑なにお金を受け取らなかった。

「手土産まで頂いて、かえって申し訳なかったね。これ、うちの妻が好きなんですよ。あと、孫も」

和菓子の包み紙を見てお爺ちゃんは微笑む。


「赤ちゃんが出来て嬉しくないのかな?」

「えっ?」

年の功なのか、お爺ちゃんは詩織の気持ちを察したようだ。

「相手に…まだ伝えてないんです」

「どうして?」

「勤め先の社長なんですけど…まだ付き合って半年程ですし…」

「時間なんて、関係あるのかな?」


関係ないと思いたかった。
涙がポロポロと溢れてくる。


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