不器用な彼女
《椎名side》


(…ったく、飲みすぎなんだよ)

千鳥足の詩織の腕を支え、大通りを走るタクシーに手を挙げる。

時間も遅くいつもより通るタクシーの台数も少ない。

折角捕まったタクシーにも乗車拒否され、捨てて帰る訳にも行かず、仕方無しに自宅に連れ帰る事に。


「社長、私…今日…誕生日だったんですよ?25!25歳になっちゃいました」

「…そうみたいだな」

残業終わりに詩織が受けた電話から下手くそなバースデーソングが聴こえてたっけ。
「今日は残業できないんですけど…」と聞いてはいたけれど…まさか誕生日だったとは。無理言って残ってもらった罪悪感の為、飲みに誘ったのだ。

「誕生日だから、ケーキ…買ってください」

「ケーキ屋なんてもうやってねーよ」

「ケーキ…食べたいです!チョコの!チョコのケーキ!たーべーたーいー!コンビニでも良いから買ってー!」

「うるさいって」

ケーキ!ケーキ!と連呼する詩織の口を塞ぎ「分かった、分かった、買ってやるから」と言うしかなかった。



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