不器用な彼女
なるべく社長を見ないように、意識しないように、いつも通りにと努めて仕事を進める。色々聞きたい事はあるけれど今は就業時間中。

CADを立ち上げ、平面図、側面図から3Dパースを作成していく。
来月末から着工の図面だ。

主に事務仕事を片付ける一美に対し、詩織は作図から発注、現場に入る職人の手配まで行う。まだ一人前ではなく椎名のお手伝い程度だが。

「櫻井、FLの修正してねーじゃん」

「え?」

「コレ、付箋貼っといただろーよ」

「あ…」

「あじゃねーよ!」

うん。大丈夫。社長はいつも通りだ。
いつも通り口が悪い。

途中まで描いたパース作成。。。また振り出しに戻る。。。

「こんな初歩的ミスしてんなよ。ここはこうやって…」

椎名が詩織の後ろからマウスに手を伸ばし、図面の修正の方法を教えてくれる。こんな事は日常茶飯事なはず。
男物の整髪料の香りがするのも、息がかかるのもいつもの事なはずなのに詩織の心臓は一気に跳ね上がった。
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