二番目でいいなんて、本当は嘘。
「仕方ない。実家に帰ってこようかな」

電話ですずの愚痴を聞かされた私は、「実家ってどこなの?」となにげなく聞き返した。

「山形のど田舎。母親は温泉宿で働いてるよ」
「え? でも……」

そこまで言って、躊躇した。

私が聞きたかったことを察したのか、すずは明るい声で言った。

「私の父は名家の御曹司だったけれど、母はそうじゃないの。普通の家の、普通の人。桐生の父からは私の養育費は受け取っていたみたいだけど、自分の生活は自分で支えていたよ」

大学で出会い、付き合っていたふたり。
けれど、すずの父親には家同士で決められていた婚約者がいたのだそうだ。
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