二番目でいいなんて、本当は嘘。
「さて、夕べ電話でご連絡した件なのですが……」

家の売買については担当者に一任していた。
けれど、取り決めの一部変更をお願いしたいということで、わざわざここまで足を運んだということだった。

当初の予定では、築30年は経つ古い家は取り壊し、土地だけを売るつもりだった。
だが、買主が建物ごと買い取りたいと言っているらしい。

「味わいのある家なので、多少のリフォームを施してそのまま使いたいということでした」
「それは構わないんですけど、でも……」

家を売るときは、古い家を壊して更地にしたほうが高く売れると聞いたことがある。
多少の値切りは覚悟していたが、できるだけ収入は確保したいというのが本音だ。

「それでしたら心配はありません。相手の方は、建物の分も料金に上乗せしたいということでした。これくらいの金額でいかがでしょう?」

電卓で提示された金額は、予定の2倍近いものだった。

「置いてあった家具もそのままで、ということなので、トータルの価格です」
「まさか、あの家に希少価値のある家具でもあったんですか!?」
「いえいえ、古物商に持っていっても、たいした金額にはならないものばかりでしょうね」

正直な返答に、「そうですか」と小さくなる。

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