二番目でいいなんて、本当は嘘。
「――桐生です」

その名前と、その声に、どきりとした。
まさか……

「ああ、薫か。私だ。いや、とくに緊急の用事というわけではないのだが……」
「母さんに、僕に電話をかけろと言われたんですね?」
「まあ、そういうことだ。今から出てこれないか?」
「どちらにいるんですか?」

ご主人が私の顔をちらりと見た。

私は立っているのもやっとの状態で、血の引く思いでやり取りを聞いていた。
目の前にいるご夫婦は、薫さんのご両親だったのだ。
< 222 / 250 >

この作品をシェア

pagetop