明治、禁じられた恋の行方
「千歳・・・大丈夫か?」
ノックの後、麗斗がそろりとドアをあける。
涙はもう引いていたが、目が腫れぼったくなっている。
すごい顔をしているだろう。
その顔を見られるのが恥ずかしく、手で隠しながら言う。
「大丈夫。ごめん、こんな、みっともない・・・」
くぐもった声に、そんな事無いから、と麗斗が返す。
少し、何かを迷うような間。
「・・・あいつ、嫉妬してたんだよ。
だから、思ってもないこと、言っちまったんだと思う。」
あの腹黒そうな女に脅されてたのかもしれないし。
困った顔でそう言う麗斗に、少しおかしくなる。
「麗斗・・・
そこは、俺にしとけ、みたいには言わないんだ。」
自分の口から出た言葉に驚く。
「お前、それ、言うか・・・?」
怒るというより、呆れた顔で麗斗は言った。
言えねぇよ。
気持ちが分かりすぎて。無理。
早口でそう言うと、もう大丈夫と思ったのか、
おやすみ、と言って、部屋を出ていった。