2570 ー男子高校生とOLー


多分この一言で、早苗さんは大体のことを理解したんだと思う



「君......」



当時の自分に自覚はなかったが
俺が着ている服も、靴も、髪型も、きっと“酷かった”から



まだ春なのに半そで半ズボンで、汚れていて、裾がほつれていて


靴は色褪せて、踵が潰れ


前髪は目を隠し、後ろは肩につきそうなほど伸びていた




「いいよ、待っててね」


彼女は急いで鍵を回す




ガチャリと扉を開けると、半袖が寒そうだったからだろうか、呆然とする自分を手招いてくれた



「良ければ上がって待っていていいよ。あげられるご飯もあんまないけど、何がいいかな」





この時


胸が躍った



何がいいかな?だって。

手を伸ばしたら誰かが助けてくれると分かった


生きるために有るものを食べていた自分のご飯に、彼女は初めて選択肢を作ってくれたのだ





その後は彼女の家に上らせてもらい、マーガリンを塗ったサクサクのトースターを食べた





「うち貧乏で、大したものがなくてごめん」と謝られたけれど


世界にはこんなに美味しいものがあるのかと感動したのを覚えている

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