私の好みはクズなんだってば。
急いで店を飛び出したはいいものの、少し時間差があったせいか凛の姿はない。何度か潰れたあいつを運んだから家までの道はわかる。記憶を頼りにネオン街を走り抜ける。

「離して!」

凛の声だ。遠くに酔っ払ったサラリーマンに絡まれている凛を見つけ急いで駆け寄る。

「オッサン、こいつ離してくれん?俺の連れなんだわ」

「…っ、里崎」

「行くぞ」

凛の手を引き家へと向かう。ここからだと俺の家の方が近い。

「ちょっと里崎!どこ行くの!!」

「俺んち。ちょっと黙ってついてこい」

なにそれ、と文句を言いたげな凛を引き摺って家までつれてくる。やってることはさっきのオッサンと変わらないかもしれない。下心だって、本当はあのオッサンと同じくらいあるんだろう。
でも、それは隠さないといけないものだ。こいつとずっと一緒にいるために。

「助けてくれたのはありがとう、でもちゃんと振り切って帰れたし」

「馬鹿野郎、お前も女だぞ。酔っ払ってフラフラしてんのにあんな危ない通り1人で歩くな!」

俺の剣幕にすこし怯えた顔をする凛。ごめん、と小声でつぶやく。違う、そういう顔をさせたいんじゃない。

「……言い過ぎた。心配した、俺のせいで1人で拗ねて潰れたのに、フラフラのまま帰ったって寒川に聞いて焦った。」

耐えきれず凛を抱きしめる。ダメだ、そういうことをすると戻れなくなるのに。里崎?と震える声がすぐそばで鼓膜を揺らす。あぁ、心地いい。自分に必死でブレーキを掛けて、腕を解く。

「頼むから、危険なことしないでくれ。俺の心臓がもたないから」

正面から真っ直ぐ凛の目を見つめて、言い聞かせるように言う。家まで送る、という俺の申し出を凛は断らなかった。
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