私の好みはクズなんだってば。
駅前の喫茶店でコーヒーを頼む。きっとあいつの事だ。まだ起きたばかりで急いで風呂に向かったことだろう。
「急がないと着く頃には決勝戦かもな」とLINEで急かすと「ああぁあ待って!急ぐから!瀬上選手ぅぅぅ!!」と、泣いているスタンプとともに送られてきて、思わず笑い声が漏れる。
2枚の切符を取り出してニヤニヤと見つめていると、横の席から声をかけられる。

「あれ?里崎?」

「おー、柳。大学外で会うの久々だな、はよ」

「おはよ、てかお前も京都行くの?今日」

「あぁ、お前もってことは柳も?」

「うん、ちょうどその辺で剣道の大会があってな。見に行こうと思って」

げっ、そういやこいつも剣道部だったなと顔を曇らせる。まさか行き先が被るとは。こうなると3人で行くことになりかねない。

「あー…俺もさ、その大会行くわ」

「里崎が?珍しいな、剣道なんか興味あったっけ」

「いや、あー、凛と」

「あー笠原とか、納得。」

じゃあ邪魔しない方がいいか?とニヤニヤしながら聞いてくるので、うるせぇと柳の足を軽く蹴る。

「俺、そんなにわかりやすいか」

「そりゃもう。お互いバレバレ」

は?お互い?と柳の顔を目を見開いて見つめる。

「お前も笠原も、まーまーだだ漏れだよ」

俺はともかく凛は違うだろと言い返そうとすると、後ろから脳天気な声が聞こえた。

「里崎ー遅くなってごめん!行こうぜー…ってあれ?柳?」

「笠原おは、今から大会行くんだろーいってら」

「えっ柳は行かんの?てっきり行くと思ってた」

俺は今日用事ーと言いながら俺に向かいウインクする。なんの気遣いだと苦い顔をしていると凛がこっちを振り返る。

「そっか、じゃあ柳の分も動画撮ってきてあげないとね!」

その笑顔が眩しくて、昨日の罪悪感で顔を背ける。小さく「…おう」と返すと、じゃあ行こっか!と手を引かれる。

振り返って柳に口パクでサンキュと伝えると、動画宜しくぅ!と笑顔で手を振られた。
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