太陽と臆病な猫

佐古優雅の話

親からメールが届いたのは、教室を出る少し前の事だった。
「今家に帰ってこないで」
大方喧嘩でもしてるんだろう。巻き込みたくないのはわかるけれど、こうして短い文だけ送ってこられても困る。どこでどう過ごせばいいんだか。
佐古家は代々続く由緒ある家。小さい頃母にはそう聞いていた。父が創立した会社が大成功して、我が家はいわゆる大金持ちと言うところで、今の時代に言うかもわからないが、母は上流階級の人間に愛想を振りまいて、精一杯の夫人を気取っていた。

「ヘドが出る」

元々、俺が通うこの私立好平(こうだいら)学園は、世界でも有名なお坊ちゃん、お嬢ちゃんが通う中高一貫の学校として知られていて、何の問題もなく、俺は敷かれたレールを歩いていた。

それも中学三年生までの話

父が不倫をしているかもしれないと母が疑い始め、毎日毎晩喧嘩が止まない。母は元々厳粛な家に生まれていたから、曲がったことが大嫌いで、探偵やら何やらで色々調べ上げて、ついこの間、父の不倫現場を押さえたばかりだった。
父は不倫をしていないと猛反撃。激しくなってきた喧嘩に俺を巻き込みたくないからと、「家に今帰ってこないで」「家に入っちゃダメ」「あの人から逃げて」等のメールが送られてくるようになった。
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