夏が残したテラス……
嵐の中、俺は店の灯りの前に車を停めた。

 おやじさんの電話から、十分程経っていた。


 店の入口のベルを鳴らすが奏海は出て来ない。
 俺は、預かっていた合鍵でショップの扉を開けた。


「奏海!」

 声を上げるが返事がない。

 二階に上がろうと手すりに手を伸ばした時、テラスへの窓が開き雨が吹きつけているのが目に入った。嫌な予感がした。


「奏海!」


 俺は、慌ててテラスへ出た。
 その途端、恐ろしい光景が目に飛び込んできた。


 外れた手すりの下から、わずかに捕まる白い手が見える。

 俺は飛びつくようにその手を掴んだ。

「しっかしろ!」

 その声に、やっとの事で見上げた顔は、泣きそうな目で俺を見た。
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