夏が残したテラス……
嵐の後
「海里さん……」

声になっているのか分からない……


 グーッと体が上げられていくのが分かり、テラスの床が目に入った瞬間、脇の部分を大きな手に捕まれたのが分かった。

そのまま、体がすっと楽になりテラスの上に倒れ込んだ。でも、体は暖かい物に包まれていて、海里さんの胸の中である事に、すぐに気付く事が出来なかった。


「こんな時に、何やってたんだ!」

海里さんの険しい声に我に返った私は、手すりの向こうへ手を伸ばした。


「おい!」

海里さんの声が益々険しくなる。


 私は、体を手すりに向けた。


「ブレスレットが……」

私は、かろうじて木にぶら下がっている、白い石のブレスレットに手を伸ばした。


「バカ。あんななもん又買ってやる!」

海里さんが、私の体をぐっと押さえた.


「嫌―! 嵐が、また、持っていっちゃう! 私の大切な物なの…… あれしかか私にはないの!」

私は、悲鳴に近い声を上げ、海里さんの手を払おうとした瞬間、ぎゅっと体を掴む手が強くなった。

同時に、叫んでいた唇を塞がれ声が出せなくなった。


唇を唇で塞がれている事がすぐには理解できなかった。


その途端、私の力は抜けていき、全ての体重を海里さんに任せてしまった。
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