夏が残したテラス……
「俺だって、大切なもの奪われたくないんだ……」

 大切なものって、私の事なのだろうか?

 大切って妹としてかもしれない。胸の奥が切なくなってしまい、なんて言っていいのか分からない。

 何も言わない私を不信に思ったのか、海里さんの手が頬に触れ上を向かせた。

 自分が今どんな顔をしてるのか分からず下を向こうと力を入れたが、海里さんは許してくれなかった。
 私の頬に手を当て、じっと伺うように目を合わせた。


「どうした? 何とか言えよ?」


 言葉はキツイが、目は心配してると訴えている。


「う……ん」

 私は、何をどう言って言いか分からず口ごもってしまった。

 このドキドキした気持ちが私だけだったとしたら、やっぱりショックだ。
 でも、答えを出すのは今なのかもしれない……

 それに、良く考えてみれば、海里さんにあんな酷い事を言ってそれっきりになっている。


「いいから、思っている事、言ってみろ……  ちゃんと聞くから……」


 私は、小さく息をつき恐る恐る口を開いた。


「婚約したんでしょ?」
< 94 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop