幼なじみの甘い牙に差し押さえられました

5 同窓会とガーターリング

週が明けると、会社では今までに無いくらい涼介が忙しそうにしていた。

打ち合わせに出ている間に、デスクには「○○へコールバックお願いします」などと書かれたメモが積み上がる。

打ち合わせが終わると、涼介はデスク上のメモをざばっと掴んですぐに次の商談に向かってしまった。


「さすがにオーバーワークじゃね?あいつ、只でさえ人の面倒ばっかり見てるのにまだ詰め込む気か」


いつも通りマイペースな山下さんがコーヒーを片手に呟く。涼介とは対照的に、山下さんはだいたい仕事してるのか遊んでるのかよくわからない。それでも何故か成果は出すという不思議な人である。


「涼介は部下の人の面倒を見てるんですか?」


「部下だけじゃなくて、顧客も取引先も全部。アンルージュだってそうだろ?」


「…確かに」


今やネット通販で徐々に売り上げを伸ばしているアンルージュも、涼介が助けてくれなかったら今頃はお店がなくなっていたのだ。


「もうあれは病気。救いたい病。」


「救いたい病?」


「アイツは何でもほっとけないんだよ。自分の首締める仕事なんか切って捨てればいいのに。

ちなみに俺は興味ある仕事しかしないタイプ」


「あー、それは分かります」


「なんだよもー。フォローしろよ」


不満顔の山下さんをほったらかして、さっさと次の仕事を確認しにいく。

新店舗に向けた作業がいよいよ本格化して、嬉しいことにやっと私もバイトとして役に立てるようになってきたのだ。

今は涼介のアシスタントである小早川さんに指示を受けながら、主に力仕事をしている。体力だけは自信があるのでこういう仕事はありがたい。


「河原さん、B倉庫に配送された資材の検品と移動お願い。必ず今日のうちに終わらせて」


「はーい。アンルージュの新店舗に移動すればいいのかな?」


「西棟の配送センターに決まってるでしょ。まさか自分で店に運ぶ気?朝から馬鹿なこと言わないで」


「……ごめんなさい」


役に立てると浮かれた瞬間に怒られてしまった。私は仕事の暗黙のルールを理解する力が乏しいらしい。

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