Sign of Love
「今日、夜は雨が降るみたいですよ。信じられないですよね、こんなに良い天気なのに」

「そうなんですか。今日は早く帰らなきゃ。傘、持ってないし」
 突然始まった世間話に笑い返した。

「ですねえ。やっぱ秋って、天気が安定しなくて嫌ですね」

 窓から見上げた空に、まだ陰りはない。それなのに窓の外を見ながら思い出したのは、入社して一年目、わたしがまだ運営部に所属していたある雨の日の事だった。


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 秋の長雨が、ガラス窓の外側に幾つもの筋を作る。規則的なノイズは、憂鬱な気持ちを流してはくれない。

電話対応に奔走する社員たちの声は明るくとも、東京第五運営部、麹町事務所の空気はどんよりと重かった。

「この時間じゃやっぱ出ないよな」

 課長の声に、受話器を握り締めたまま柱時計を見上げる。二十二時。本社の社員はみんなとっくに帰社しているのかもしれない。

頭の中で数えていたコールが途切れて、自動音声に切り替わる。わたしはそのまま受話器を下ろした。
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