Sign of Love
 帰り支度をして、不要書類をシュレッドしてからエレベーターを呼ぶ。窓から何気なく外を見遣ると、昼間カフェで聞いた天気予報が当たっていることに気が付いた。雨は音もなく、静かに降り続けている。

 エレベーターを下って、セキュリティドアのロックを解除する。駅までは歩いて五分。……社報、濡らしたくないな。

 歩きながらカーディガンを脱いで、雨よけとして鞄の上からかけた。
 自分は濡れながら帰ろうと諦めながらビルの入り口に向かう。見覚えのある背中があって、思わず足を止めた。

 ……坂巻さんだ。もう帰ったと思ったのに、なんでこんなところにいるの。

 セキュリティドアの向こうに戻ってやり過ごそうかと思ったけれど、よく見たら電話中みたいだ。

もし目が合っても、お辞儀でもしてすぐに通り過ぎてしまえば大丈夫。考えとは裏腹の割り切れない気持ちを無理矢理殺して、坂巻さんに近付いた。

 コツコツ響くヒールの音に、坂巻さんが振り返る。わたしに気付くとお辞儀してくれた。
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