願わくは、雨にくちづけ
――交際してから、初めての誕生日を今週末に迎え、立花は内心ソワソワしていた。
このところ仕事に追われながらも、時間を見つけては伊鈴の誕生日を最高の日にしようと動き回っている。
(1週間か……)
不意に現れた伊鈴が放っておけず、雨の中でデートをして、別れてからの時間を思い出す。
名刺を渡したのに連絡はなく、居場所を知っているはずなのに姿を見せず、音信不通になったのだ。
あんなふうに恋に落ちたことはなかったし、たった24時間で自分に興味を持ってくれて、同じような想いを持ってくれること自体、今となっては奇跡のようだと思える。
でも、あの時は、待てど暮らせど伊鈴が現れることはなく、恋を諦めることの難しさを知った。
あと1日、もう1日だけと片想いを続け、週末になっても会えなければ、今度こそ失恋を認めるつもりだった。
だけど、金曜の夜、外出先から閉店間際の店に戻ったところで、思わぬ再会を果たした。
もし、数分遅かったら……本当に彼女のことを諦めていたかもしれない。