願わくは、雨にくちづけ

「こちらは大変人気のあるシリーズです。ネックレスや指輪もございます」
「そうなんですね。……伊鈴、このブレスレットなんてどう?」

(かわいいけど……)

 プラチナのそれは、スマイルマークのようなデザインが弧を描いていて、ダイヤモンドがびっしりと敷き詰められている。
 値札を見ずとも高価と分かるけれど、立花と店員の押しに負けて、気づけば左手首に巻かれてしまっていた。


「どう? 気に入った?」
「……はい。でもっ」

 ジュエリーにもひと目ぼれがあるとは聞いていたし、腕時計やバッグだって店先で目に留まるものはある。
 だけど、いま伊鈴の手首を飾っているのは、気に入ったからと簡単に手が出せるものではない。


「では、こちらでお願いします」

 立花は、あたふたする伊鈴に微笑みかけ、新品を出してきた店員と一緒に傷などがないか確認し、カードで会計を済ませてしまった。

 店員に入口まで丁寧に見送られ、ふたりは頭を下げて後にした。

< 60 / 135 >

この作品をシェア

pagetop