願わくは、雨にくちづけ
「煌さん!」
「なに?」
「もう、お買い物はしませんからね!」
「わかってるよ。プレゼントはこれでおしまい」
頑なだった立花の気も済んだようで、伊鈴はようやく胸を撫で下ろしたのだった。
秋の夕暮れが都心の空を橙に染めていく。青空と混ざり合う夕方の時間は、夜空とは違う特別感がある。
車まで向かう間、赤信号で立ち止まった伊鈴は空を仰ぎ見た。
(1年前とは全然違うんだなぁ)
あの頃の今日は、まだ拓也と付き合っていたし、別れるなんて想像もしていなかった。
多忙を理由にあまり会ってくれなくなっていたけれど、それが浮気のサインだったとも気づかず、ひとりで結婚や甘い生活に夢と現実を乗せていた。