願わくは、雨にくちづけ

 今になれば、いろいろと分かることもある。

 本当に愛してくれる人は、決してひとりにはしない。
 どんなに忙しくても、それを理由にして会えないなんて言わないし、仕方なくそういう日が続く時だって信用ができるものだ。
 そして、どんなに疲れていても、会うと笑顔を見せてくれて、一緒にいる意味を与えてくれる。
 一緒に幸せな時間が過ごせるようにしようと、伊鈴の気持ちをきちんと掬ってくれたりもする。

(煌さんと出会えて、本当によかった……)

 ふとそんなことを考えていると、空を仰ぐ伊鈴を見つめていた立花が頬にキスをしてきた。


「どうした? 切なそうにして」

(煌さんには隠し事できそうにないなぁ)

 出会った時もそうだった。
 泣いている伊鈴を放っておけないと、あれこれと尽くしてくれた。
 酔いつぶれた彼女をタクシーに乗せて帰すこともなく、急遽スイートルームを取って宿泊してくれたのだ。

 昨今のドラマにも出てこない完璧な男性という印象を持ったのは、あの時だったかもしれない。

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