願わくは、雨にくちづけ
すっかり日が暮れた頃、立花は恵比寿にあるフレンチレストランに車を停めた。
「ここって……」
「覚えててくれた?」
「もちろんです!」
まるでお城のような石造りの外観の店は、1年前に立花に告げた我儘を叶えてもらった場所だ。
常に予約でいっぱいなのに、どういうわけか彼はスムーズに店内に案内され、伊鈴が望む席へと連れてきてくれたのだ。
「立花です」
「お待ち申し上げておりました。ご案内いたします」
そして、今日も伊鈴をエスコートしながら、黒のテーブルクロスが敷かれた円卓へと導いていく。
あの日は、悲しい誕生日を上書きしてくれる彼の優しさに触れながらも、出会ったばかりなのに我儘を聞いてもらう申し訳なさでいっぱいだった。
今日だって、素晴らしい時間にしようとしてくれる心遣いがありがたくて、お礼を言っても言い切れない。