願わくは、雨にくちづけ
部屋まで案内するベルマンは、四輪のカートに見慣れないスーツケースと伊鈴の荷物を乗せて押している。
「煌さんも荷物があったんですか?」
「ん? あぁ、チェックアウトは月曜の朝だからゆっくりしようと思ってね。ずっとスーツは疲れるし」
(明後日まで、このホテルに泊まるの!?)
伊鈴へのプレゼントだけは自分で持つ立花は、驚いている彼女の背に手を添え、微笑みを返事に変えた。
上層階まではあっという間だった。
エレベーターを降りてから少し歩くと、ベルマンが観音開きのドアをカードキーで解錠して開けた。
「こちらのお部屋でございます」
「ありがとう」
恭しく頭を下げるベルマンに、立花が礼を言う。
「わぁ……」
エントランスを抜けると、ソファセットが設けられたリビングがあり、ダイニングが繋がっている。
さらに、都心の景色が一望できる眺望に見惚れ、伊鈴はガラスにくっつくようにして呆然と立ち尽くした。
遠くまで目を凝らして眺めていると、「天候のいいお昼間は、こちらから富士山もご覧になれます」とベルマンが教えてくれた。