願わくは、雨にくちづけ
「煌さん、すごいです!」
調度品も素敵で一面ガラス張りの部屋に、伊鈴は思わずそんな言葉をかけていた。
「気に入ってくれたみたいでよかった。……ありがとうございます。こちらで大丈夫です」
ベルマンから荷物を受け取った立花は、彼にチップを渡し、エントランスまで見送っている。
伊鈴は、誕生日にこんなに素敵な経験をしたことはない。
友人からは、海外旅行中に誕生日を迎えたとか、背の高いビルの最上階でディナーをしたとか、そういう惚気話をさんざん聞いていたけれど、自分には縁のないことだった。
それに、特別豪勢なことがなくても、大切な人と一緒に過ごせたらそれがいいと思っていた。
だけど、立花は想像を易々と超えて、サプライズをプレゼントしてくれる。
会えないと思っていた日も、時間を見つけたら会いに来てくれたこともあった。
伊鈴が〝寂しい〟とメッセージを送ったら、すぐに電話をして声を聞かせてくれたこともある。
そんな日々の小さな幸せも、今日のこの大きなサプライズも、なにもかもが自分のためなのだ。
そして、この1年は間違いなくふたりのためにあった時間が、数えきれないほど詰まっている。