願わくは、雨にくちづけ

 その熱を確かめるように、立花はキスをひとつ落とす。
 やわらかな唇が頬に触れて、一層火照らせると、彼は大きな手で包み込んだ。


「愛してるよ」
「私も、煌さんを愛してます」

 綺麗な弧を描いた立花の唇と、見事なまでに凄艶な微笑みに、心が吸い取られるようだ。

(愛しくてたまらないよ、伊鈴)

 立花は〝好き〟だとか〝愛してる〟なんて言葉では足りないほどの想いを、どうしたら伝えられるのかともどかしさを抱えた。
 伊鈴の瞳に映る自分は、完全に恋に堕ちている男の顔をしていた。


 どちらからともなく瞳を閉じ、そっと唇を合わせる。
 感触を確かめ、やわらかさを食んで味わう。

 音のない広い部屋に、キスの音が微かに響いていると気づいたら、伊鈴は少し恥ずかしくなった。

< 72 / 135 >

この作品をシェア

pagetop