願わくは、雨にくちづけ
(諦めの悪い男に気に入られちゃったんだな。さて、これからどうする……)
立花は、新井が本当に諦めたわけではないと考えた。
本当に勝算がないと思っているなら、時間の無駄だからだ。ましてや、日々会社で顔を合わせる相手なのに、好きでいるだけつらいだけだろう。
(それができるのは、片想いを続けていくつもりがあるからじゃないのか?)
「少し飲もう」
「あっ、そうですね! お酒好きの煌さんにこれ以上我慢させるわけにはいきませんね」
(酒よりも我慢できないことがあるって分かってるのかな、伊鈴は)
立花は心の中でひとりごちながら、ダイニングの一角にあるワインセラーに向かい、中を確認する。
しかし、伊鈴も飲めそうなものがないので、立花は部屋専属のコンシェルジュに連絡を入れた。
ほどなくして、頼んだ赤ワインが届き、チーズと一緒にリビングで楽しむことにした。
「うん、いいワインですね。これをいただきます。ありがとう」
テイスティングまで見届けたコンシェルジュは、ふたりのグラスに適量を注いで部屋を出ていった。
昼間から断酒していた立花は、結構なペースで1杯目を開け、早くも2杯目を注いでいる。