願わくは、雨にくちづけ

「煌さんが跡取りって……。それって、つまり」
「俺は、朝比奈煌として生きてきた。でも、5年前からは立花姓になった。朝比奈家から出て、立花の養子になったんだ。……驚かせてごめん」

(立花家にしても、朝比奈家にしても、私とは住む世界が違うけど……。養子になるなんて余程のことがないと受け入れられないはず)

「煌さん、話してくれてありがとう。でも、どうしてそんなことに? だって、煌さんはご実家を継がなくちゃいけなかったんでしょう?」

 驚きはしたものの、話を聞いた伊鈴は意外と冷静に頭を働かせている。
 出会った日、鮨店で彼が〝食卓にはパンが並んでいた〟と話していたのを思い出し、1年経ってようやく繋がりハッとした。
 当時の彼はどんな思いで決断したんだろう。それともそうするしかないような状況があったのか……。

< 88 / 135 >

この作品をシェア

pagetop