氷室の眠り姫
「だが、この光は紗葉が能力を使った時に放つ光に似ている」
その言葉に慌てて紗葉を見直すが、光っていること以外に変化はない。
「……いや、これは」
紗葉の真っ白に染まっていた髪の色が徐々に変わり始めていた。
「…紗葉自身が癒されているのか?」
驚きながら見守っていると、紗葉の手や顔に刻まれていたシワが薄くなり消えていった。
「紗葉!?」
震える手で流が紗葉の頬に触れれば光が更に増す。
「間違いない。本来ならかなりの時間が必要であろう回復が急激になされている」
柊はただ真っ直ぐに紗葉を見つめている流に視線を移した。
(……流が関係してるのか?)
見れば流に反応して光っているように見えた。
「流、そのまま紗葉の手を握っていろ。樹、至急医師を手配しろ。確か一族から医師の資格を持った者がいただろう?」
「分かりました、すぐに!」
返事をするや、樹はあっという間に氷室から姿を消した。
「柊様、紗葉はいったい…」
「詳しく調べれば一族に関する資料に載っているかもしれないが、すぐには分からない。少なくともここ何代かでは前例のない事象だ」
二人はどんどん元の姿に戻っていく紗葉の姿を見守る。
「こうなった理由は分からないが、少なくとも悪い結果にはならないだろう」
柊の言葉に流は安堵の息をついた。
「紗葉…みんな待ってるぞ」
流が愛しさを隠そうともせずに紗葉の頭を撫でている姿を見て、柊は己のしたことが正しくなかったことを痛感した。
(あれしか方法はなかった。間違いではなかった。それでも許されないことをした)
柊はただ静かに紗葉の目覚めを待った。