蒼い月と紅の灯火

「ん、術解けた」




簡易的な拘束術。
けど、今からじゃ追い付きもしない。




「朔夜さんのとこに帰ろう」




まずは、朔夜さんから話を聞かなければ。
里の事や、兄弟について。




疲れきった足を動かして家に帰る。
色々戸惑いはあるけれど。




やることは一つだから。




「ただいまー」




「おかえり朱里ちゃーん!」




帰ってきた私を見るなり抱きつこうとしてくるのでそれを回避する。




「酷いよー!」




「あ、お話あるんですが」




「それは構わないけど、買ってきてないの?」




「あ……」




団子と蒼兎に夢中になっていてお使いを忘れていた。




「まー仕方ないね! それで話って?」




「ごめんなさい! あ、えっと……」




「ん?」




きょとんとした顔で私のことを見る。
けれど、目を細めて何かに気付いたかのように考え込んだ。




「ねぇ、もしかして、町で蒼兎に会った?」




「はい、蒼兎に会いました」




会ったというより、追いかけ回して捕まえたというほうがこの場合は正しいけれど……。

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