エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
私はひどく惨めな気分になって、自分を保つためにこんな嘘を吐く。
「婚約者の方がいるとは知らず、すみませんでした……。でも、ちょうど私も彼とは別れて、別の人とお付き合いしようと思っていたところだったんです」
それが痛々しい姿だったのだろう。真横から、心配そうな露子の視線を感じた。
「そうだったの。よかったわ。じゃあ、もう一誠と関わることもないわね」
「はい。……ご迷惑おかけしました」
ぺこりと頭を下げた私に、百合さんは「いいのよ」と優しく言ってくれ、またそれが惨めだった。
やがて、百合さんはカツカツとヒールを鳴らして私の元を離れた。そして視界からその姿が消えたのを確認すると、露子がためらいがちに口を開く。
「巴。あのさ……“別の人”と付き合うって」
「我ながら浅はかな嘘だよね。でも、それくらいしか武器が思いつかなくて……にしても攻撃力弱すぎだって」
あはは、と乾いた笑みをもらすけど、露子は全然笑ってくれない。
というかむしろ眉間に皺を寄せた険しい表情をしていて、露子がそんな顔することないよと言おうとしたその時。