エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
「許せない、部長の奴。フリーだったらまだ許せたのに、あんなキレーな婚約者いるくせに、巴に手えだして、傷つけて」
「露子……」
自分のことのように怒ってくれる彼女の気持ちが嬉しい。それに、百合さんにやり込められても私が泣かずにいられるのは、偶然とはいえ隣に露子がいてくれたからだ。
「きっと次は、ちゃんと巴のこと想ってくれる人が現れるよ。あんな男のことは早く忘れな?」
「う、ん……」
小さく頷きつつも、一誠さんを忘れられる自信はあまりなかった。
第一、毎日職場で顔を合わせるのに、どうやって忘れたらいいんだろう。……社内恋愛なんて、やっぱり最悪だ。
私は頭上の空を仰ぎ見て、その晴れわたった青色には似合わない、重苦しいため息を吐いた。
*
【短い間でしたが、ありがとうございました】
百合さんと話したその日のうちに、一誠さんに送った最後のメッセージだ。
特に返事はなかったけれど、夜の間に既読マークがついたので、了解したってことなんだろう。
これで、一誠さんは、百合さんと結婚する。社長の機嫌も直ったことだろう。もともと私には関係のない、雲の上の出来事だったのだ。
……シンデレラは、もとの姿に戻った。それだけのこと。